老人に変装P・ムーアさんに聞く――無視、不当な扱いを体感(生活家庭)(1996年12月10日)

■いつ?
1970年代
■どこで?
北米の街
■誰が?
パトリシア・ムーア氏(工業デザイナー)
■何をした(する)?
老人に変装し、人々の対応ぶりや街の設備の観察をした。
■なぜ?
老人に興味があったから。
■どのように?
・米国の工業デザイナーであるパトリシア・ムーア氏は、日本ウェールジング協会の招きで来日し、1996年12月頃、自身の老人変装体験に関して日本経済新聞社のインタビューに回答した。

・パトリシア・ムーア氏が老人に変装し訪問した街は100以上で、その活動は3年間にわたったと語る。

・変装の方法は、特殊メーキャップを施し、動きにくくするために手足にテープをぐるぐる巻き、その上から厚手の衣服を着るなどで、1回の準備に4時間かかっていた。

・パトリシア・ムーア氏は、変装体験をもとに提唱しているUDの核となる考え方について「年をとることは、何かが出来なくなることではなく、機能が違ってくること。だから、一通りにしか使えないのではなく、各人のニーズに応じていかようにも使える、というのがUDの考え方。それは大幅なデザインの変更を伴うものではないし、高齢者用と称して機能優先で味気ないデザインにする必要もない。」と語った。

・また、「日本でも擬似老人体験が盛んになっているが、特に意思決定をする社会の中枢にいる人に体験してもらいたい。自分と違った機能を持つ人の視線で世界を見ることでアイデアも生まれてくる。高齢者も含め、誰もが生きやすい社会をつくるにはそんな新しい発想が求められている。」と語った。

■参考資料
「老人に変装P・ムーアさんに聞く――無視、不当な扱いを体感(生活家庭)」『日本経済新聞』1996年12月10日,夕刊,17面

高齢者は専用品求めず、柔軟性持つ製品作り提言――通産省研究会が報告書(1996年5月10日)

■いつ?
1996年5月頃
■どこで?
記載なし。
■誰が?
通商産業省(現・経済産業省)「高齢社会対応型産業研究会」(代表・斉藤雅夫東京電機大学教授)
■何をした(する)?
高齢者の特性に配慮した製品・サービスを提供するための課題・条件について報告書をまとめた。
■なぜ?
高齢者は高齢者専用品を求めておらず、企業はすべての人が共用できる柔軟性を製品に持たせるUDを採用するべきと考えたから。
■どのように?
・報告書は高齢者約160人へのアンケートやメーカー、流通など企業40社への聞き取り調査を参考にまとめた。健康な高齢者を想定している。

・現在、高齢者専用品は身体機能の補完だけに重点が置かれ、色彩や見栄えがおろそかになりがちとして、UDを打ち出した。また使いやすさ、分かりやすさなど基礎的なニーズを満たした上で、生活を豊かにする「モアニーズ」にこたえることが肝要と指摘している。

■参考資料
「高齢者は専用品求めず、柔軟性持つ製品作り提言――通産省研究会が報告書」『読売新聞』1996年5月10日,朝刊,13面

デザイン分野で世界初の横断組織(文化往来)(1995年11月21日)

■いつ?
1995年11月頃
■どこで?
東京
■誰が?
「日本デザイン機構」(栄久庵憲司会長)
■何をした(する)?
機構発足後、最初の事業としてシンポジウム「日本のデザインを考える」を開催した。
■なぜ?
これまでデザイン界は分野ごとに協議会などを作っていたが、従来の縦割りの個別分野で対応できない問題などが生じ、総合的なまとめ役としてデザインの重要性が増したので、横断的なデザイン組織が必要になったから。
■どのように?
・日本デザイン機構には現在、デザイナーを中心に建築家やシステム工学の研究者、評論から約100人が参加しており、防災・復興などの緊急課題やエコロジーなどの重点課題の研究、国際的な交流、フォーラムやシンポジウムなどの公開活動、デザイン賞新設などの事業を予定している。

・創立記念のシンポジウムでは下河辺淳東京海上研究所理事長、グラフィックデザイナー福田繁雄氏、インダストリアルデザイナー鴨志田厚子氏らが講演した。下河辺氏は「デザインとは意図すること。新しいものを作る時には古いものの全否定から始めるべきだ」と激励した。

・鴨志田厚子氏はシンポジウムで「UDの現状」を報告した。日本デザイン機構の発足については、「(UDが)より広がるためにも横断的な組織は有意義」と指摘した。

・日本デザイン機構の栄久庵憲司会長によると、海外でもこうしたデザインの横断組織の必要性が痛感されており、世界工業デザイン協議会などデザイン各分野の世界組織を網羅した、世界デザイン機構の設立が待たれているという。だが、具体的に横断組織が作られたのは日本が初めてで、世界の先駆けとして各国から注目されている。

・1995年11月21日の日本経済新聞では、UDは「新しい動きとして小さな工夫で身障者にも健常者にも便利に使える『ユニバーサルデザイン』」と表現されていた。

■参考資料
「デザイン分野で世界初の横断組織(文化往来)」『日本経済新聞』1995年11月21日,朝刊,40面